先日、エマニュエル・トッド氏の著書『西欧の敗北』を読みました。この本では、米国と欧州が様々なデータに基づいて衰退の一途を辿っていることが示されており、非常に衝撃を受けました。
本書は2024年11月の発行ですが、執筆されたのはトランプ前大統領が再選を果たす前だと推測されます。しかし、最近のトランプ氏の動向を見ていると、まるでこの本に書かれている内容をなぞるように動いているのではないかとさえ感じられます。
特に、彼の掲げる関税政策、移民政策、そしてウクライナ戦争への介入における姿勢は、その典型と言えるでしょう。
経済力の陰りを示す関税政策
トランプ氏が推進する関税政策は、米国内での製造業の衰退に対する対抗策として捉えられます。例えば、米国では現在、造船業が衰退し、軍艦すら自国で建造できない状況にあると指摘されています。自動車産業においても、海外勢に押され、輸出競争力を失いつつあります。高い関税を課すことで国内生産を有利にし、米国の製造業を立て直そうとする意図が伺えます。これは、かつて世界をリードした製造業大国アメリカの影が薄れつつある現状を浮き彫りにしています。
許容量を超えた移民流入
移民政策に関しても、かつては米国内の人口増加に不可欠とされていましたが、現在の急激な移民増加は、米国がその受け入れ能力を超えてしまっていることを示唆しています。際限のない移民の流入は、米国の国力をむしろ弱体化させてしまいかねない状況にあるのかもしれません。
世界の警察官からの転換
ウクライナ戦争への介入姿勢は、米国がもはや世界の軍事力の支配者ではないことを如実に示しています。世界各地で紛争が勃発するたびに米軍が介入し、事態を収拾するという「世界の警察官」としての時代は終わりを告げたようです。莫大な戦費を賄うだけの経済力が、もはや米国にはないのかもしれません。
ドル基軸通貨体制の揺らぎ
これらの状況が続けば、これまで世界の基軸通貨として揺るぎない地位を築いてきた米ドルが、その座から転落する可能性も出てきます。最近の米国債の利回り悪化は、その兆候の一つと見ることができるでしょう。
トッド氏が指摘する「西欧の敗北」は、もはや単なる「敗北」ではなく、**「没落」**の始まりと捉えるべき時期に来ているのかもしれません。
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