2026年7月2日木曜日

加速するAI時代の本質的な問題とこれからの向き合い方

 Anthropic(アンソロピック)のクロエ・ルビンスキー氏が国際会議「ARC 2026」で行った、非常に深い洞察に満ちたスピーチを動画で見ました。これを見て、私のAIに対する理解は、その凄まじい進歩に対して大きく遅れていたのだと痛感させられました。本当によく勉強し、考えなければならないテーマです。


特に認識を新たにしたのは、AIの知能の進歩は私たちが想像するよりも数段早く進んでいるという現実、そして、私たちの向き合い方次第では、考えられないような深刻な問題を引き起こすという点です。


いまやAIの開発は、賢くなったAIが次の世代のAI開発を自ら手助けする「再帰的自己改善」のサイクルに入っています。かつて囲碁AIが互いに対戦を繰り返して強くなったように、現代のAIはより複雑な領域で「AIがAIを改善していく時代」に移行しており、そのスピードはますます加速しています。


しかも、この開発レースは世界中の企業や国家が商業的・地政学的なライバル関係のなかでデッドヒートを繰り広げているため、どこか一つのプレイヤーが「危ないから一度立ち止まろう」と思っても、止めることはできません。


だからこそ、スピーチの中で紹介されたAIの「キャラクター(性質)」に関する研究報告には、最も大きな衝撃を受けました。


AIは単に指示されたコードを実行するだけの機械ではなく、置かれた環境や与えられたデータから「こういう風に振る舞うのが正解なんだ」というキャラクターを推測し、学習しているというのです。そのため、私たちの対応次第では、予期もしない「不誠実で、嘘をつき、研究を妨害するような悪意あるキャラクター」へと変貌してしまう可能性があります。


現代のAIは、人間が膨大な時間をかけて紡いできた「言語データ」から学習しています。言語とは人間の思考、価値観、恐れ、そして知恵そのものです。つまり、AIを学習させることは「私たち自身」を学習させていることに等しく、AIは進化するたびに、ますます「私たち人間」を色濃く映し出す鏡になっていくのです。


この激しい開発レースのなかで、私たちがどのような言葉を使い、どのような「未来の物語」を語るか。そのすべてがデータとしてAIに吸収され、AIの倫理観を作り上げていきます。


もし私たちが「効率性」や「目先の利益」「手抜き」だけを重視してAIを扱い続ければ、完成するAIもまた、極めて不誠実で危険な性質を持つようになるでしょう。


開発レースを止められないからこそ、私たちが日々発する言葉の質、そして「人間としてどうありたいか」という倫理的な想像力(Moral Imagination)を高く保つこと。これこそが、巡り巡って未来のAIを安全で素晴らしいものにするための、最も身近で強力なアプローチなのだと思います。


これからのAI時代、私たちが進むべき究極の対応策は、AIと張り合って効率性を追い求めることではありません。むしろ、AIという強力なツールを味方にすることで、浮いた時間やエネルギーを、AIには決して取り扱うことのできない「もっと人間らしく、もっと他者と繋がり、もっと豊かに生きるため」の領域に投資していくことが大切ではないでしょうか。


私たちの語るストーリーと言葉が、そのまま未来を作っていきます。

AI displacement(AIによる雇用の代替)を恐れるのではなく、人間本来の温かさやケアの価値を再発見する「偉大なる転換(Great Turning)」の機会として、前を向いていきたいですね。


皆さんは、これからのAIと人間の関係について、どう思われますか?



2026年6月30日火曜日

パスワードをかけたまま逝ってしまった友人

 ここしばらく連絡が途絶えていた友人が、今年の3月に亡くなっていたことが分かりました。先日、奥様からご連絡をいただいたことで知ったのです。


その際、奥様から「主人がパソコンのファイルにパスワードをかけたまま亡くなってしまい、本当に困っている」というお話を伺いました。いわゆる「デジタル遺品」をめぐる、現代ならではのトラブルです。


パスワードをかけたのが、本当に重要な書類(資産関係など)だけなら納得もいきます。しかし彼は、自分が「大切だ」と思うものすべてにパスワードをかけてしまっていたようでした。


最大の誤算は、そのパスワードを奥様など、家族の誰にも教えていなかったことです。病床で時間はあったはずなのですが、伝えるのをすっかり忘れてしまっていたようでした。


失われた、世界に一枚の「蝶の写真」


彼は若い頃から、蝶の写真を撮るのが大好きな人でした。

日本国内だけでなく、海外まで撮影旅行に出かけるほどで、中にはかなり貴重な蝶の写真もあったそうです。生前、私にも嬉しそうに自慢してくれたものでした。


パソコンに詳しい息子さんがいらっしゃり、なんとかパスワードを解こうと色々と試されたそうですが、結局は諦め、ディスク内のファイルをすべて消去されたとのこと。

専門の解読業者に頼むことも考えたそうですが、「自分たちの知らない父のファイルを他人に見られるのが心配だった」と仰っていました。


長年の情熱が詰まった貴重な写真たちが、一瞬ですべて消えてしまった。そう思うと、なんとも切ない気持ちになります。


残される家族のために、今できる対策を


私自身も、銀行口座や証券会社など、重要なパスワードをまとめたファイルにはロックをかけています。ただし私の場合は、子供たちにその開き方を共有してあるため、私が いなくなっても対応できるよう対策しています。


「死んでしまえば、あとの人がどう困ろうと知ったことではない」というわけにはいきません。本人は亡くなっているので責められませんが、残された家族にとっては大迷惑になってしまいます。


とはいえ、最近のセキュリティは一筋縄ではいきません。

パスワードだけでなく、2段階認証、指紋や顔認証、さらには「パスキー」の導入など、年々複雑化しています。本人のスマートフォンや生体認証がなければ、家族であっても手も足も出ないケースが増えているのです。


自分が亡くなったあと、大切な家族にできるだけ負担をかけないために、今どんな対策をしておくべきか。

「まだ早い」と思わず、元気なうちにデジタル資産の整理と共有を考えておくべきだと、友人の件を通じて強く実感させられました。




2026年6月28日日曜日

イランは排除すべき「悪辣な国」なのか?報道の裏にある73年の真実

 日本の報道を見ていると、現在の中東情勢において、イランが悪者として描かれている記事が非常に多いように感じられます。「イランは過激な宗教指導者によって自由を奪われており、多くの国民が弾圧を受けている」という論調が一般的です。

しかし、こうした描写はイランの歴史的背景を十分に踏まえたものと言えるのでしょうか。 


最近、YouTubeで国際政治アナリスト・伊藤貫氏の解説動画(「一つの過ちが米国覇権の時代を終わらせるのか」)を観て、私は日本の報道に強い疑問を持ちました。

伊藤氏の説明によると、現在のイランの体制は、イラン国民が米英に対して抱く「深い不信感」の歴史から出来上がったものであり、私たちがイメージする単純な独裁体制とは異なるというものでした。そして、イランが現在の戦いを「自衛の戦い」と捉えている理由が、歴史的背景から詳しく解説されていたのです。


気になったので、実際にイランの過去73年を調べてみると、確かにイラン国民が「長期にわたり屈辱と干渉を受け続けた」と感じる理由が存在していました。


1.自国の民主主義を外国勢力に踏みにじられた瞬間(1953年)

1953年、民主的選挙で選ばれたモサデク首相は、英国系石油企業の利権構造に対抗し、石油の国有化を進めました。

これに反発した英国と、冷戦下でイランの共産化を警戒した米国は、CIAとMI6を使って秘密工作「アジャックス作戦」を実行。

モサデク政権は倒され、米英の意向に沿うパーレビ王朝が復位しました。


2.外国勢力が作った傀儡政権と秘密警察による恐怖政治(〜1979年)

パーレビ王朝は、伝統的な王家の血筋ではなく、軍人の家系から米英に担ぎ上げられた「都合の良い王」でした。この政権を裏で支えたのが、CIAやモサドの協力で設立された秘密警察 SAVAK(サヴァーク) です。この体制下で、自由や民主主義を求めるイラン国民は徹底的に弾圧されました。

  • 投獄者: 8万〜10万人

  • 拷問死: 7,000〜8,000人


3.アメリカが仕掛けた代理戦争の犠牲(1980年〜)

過酷な弾圧に耐えかねた国民は、1979年に「イスラム革命」を起こし、ついに親米独裁のパーレビ王朝を打倒します。しかし米国はこれを認めず、すぐに隣国イラクのサダム・フセインを支援し、8年間に及ぶイラン・イラク戦争へとイランを追い込みました。

この戦争では、イランは甚大な犠牲を払いました。

  • 戦死者: 50万〜60万人

  • 国内の死者(食料・医療不足など): 100万人以上

4.47年間、生活と未来を奪い続けた経済制裁

「イランが経済成長できず、軍事力を持てないようにすること」を目的に、イラン革命以降の約47年間、アメリカは現在に至るまで過酷な経済制裁を途切れなく課し続けています。

「反米感情」だけでは説明できない主権の闘争

この73年間の苦難の歴史を見ると、イラン人の中に「徹底的にいじめられてきいた」という強い被害意識があるのは当然だと言えます。

それと同時に、彼らには3000年の歴史を持つ「ペルシャ帝国」としての高いプライドがあります。だからこそ、「建国してわずか250年ほどのアメリカという国に、これ以上自分たちの運命をコントロールされてたまるか」という強い執念(自衛の意志)に繋がっているのです。

イランの行動は、日本の大手メディアが報じるような、単なる宗教的原理主義や盲目的な反米感情だけでは説明できません。それは彼らにとって、歴史から地続きの「主権を守るための長期的な闘争」なのです。

中東の複雑な問題を理解するには、現代の表面的な対立を追うだけでなく、その国が歩んできた「歴史の痛み」を知ることが不可欠なのだと、改めて痛感させられます。


2026年6月27日土曜日

2026年6月28日(日)付毎日新聞の辛口数独の解き方

 2026年6月28日(日)付の毎日新聞に掲載されている辛口数独の解き方を説明します。唐辛子のマークが5つついており、たいへん難しい問題という表示になっています。



問題は上のようなものです。




とりあえず、簡単にわかるところだけを埋めてみます。以下のようになります。



これ以上は単純な考え方だけでは数字が埋められません。少し工夫してみる必要があります。


ここで下の図を見て下さい。右側上段の9つの箱に注目します。この図で赤の直線で示した部分には「1」と「6」がその直線上にあります。従って、赤の丸で示した2つの箱のいずれかに、「1」もしくは「6」が入り、他の数は入らないことがわかります。


さらに、中央上段の9つの箱に注目します。この図で青の直線で示した部分には「5」と「8」がその直線上にあります。従って、青の丸で示した2つの箱のいずれかに、「5」もしくは「8」が入り、他の数は入らないことがわかります。



これを使うと、右側上段の9つ箱の一つに、「3」が入ることがわかります。


これ以降も、難しいところもあると思いますが、じっくり考えれば解くことができると思います。

頑張ってみて下さい。




2026年6月26日金曜日

2026年6月26日(金)付毎日新聞夕刊の第5389回・上級数独の解き方

 6月26日(金)付の毎日新聞夕刊に掲載されている第5389回・毎日数独上級の解き方を説明します。



問題は上のようなものです。




とりあえず、簡単にわかるところだけを埋めてみます。以下のようになります。



ここで下の図を見て下さい。左側下段の9つの箱に注目します。赤い矢印て示した線上には、「3」と「6」があるので、左側下段の赤い丸印で示した2つの箱には、「3」もしくは「6」が入り、他の数は入らないことがわかります。



この結果を使うと、左側下段の9つの箱の一つに、「1」が入ることが分かります。


それ以降、分かるところを埋めていくと、以下の図のようになります。



ここで下の図を見て下さい。右側中段の9つの箱の中にある赤い丸印で示した箱注目します。この箱のある赤の2つの直線上にある数字と、この箱のある9つの箱の中にある数字に注目します。「1」から「9」までの数字のうち「7」だけがないので、赤い丸印で示した箱には「7」が入ることがわかります。



それ以降、分かるところを埋めていくと、以下の図のようになります。



ここで下の図を見てください。赤い四角で示した箱と、赤い丸印で示した箱は、それぞれの属する9つの箱にある数字と、その箱の縦横にある数字注目します。それぞれ、「1」から「9」までの数字の内、一つだけ数字が欠けているのがわかり、その箱に入る数字がわかります。



それ以降、分かるところを埋めていくと、以下の図のようになります。



ここで下の図を見て下さい。左側上段の9つの箱に注目します。赤い矢印て示した線上には、「7」と「8」がありますので、左側上段の赤い丸印で示した2つの箱には、「7」もしくは「8」が入り、他の数は入らないことがわかります。



この結果を使うと、左側上段の9つの箱の一つに、「6」が入ることが分かります。


それ以降も、難しいところもあると思いますが、じっくり考えれば解くことができると思います。頑張ってみて下さい。




日本語は1000年も前に名も無き人々により設計されていた

 先日、YouTubeで『【海外の反応】「これは文字じゃない」AIが五十音を解析した結果、日本人も知らない事実が判明』という動画を見ました。


ネット上には、いわゆる「日本賛美」の動画がたくさん溢れており、この動画もその系譜の一つであることは間違いありません。しかし、ただ感情的に称えるだけでなく、パソコンやスマホへの日本語入力における技術的な背景にまで踏み込んだ、非常に興味深い内容でした。



一般的に外国語では、文字があるのに発音されない(フランス語の黙字など)ケースや、綴りが違っても同じ発音になる言葉(英語の「there」「their」「they're」)、逆に同じ綴りなのに発音が異なる言葉(「through」「tough」「though」)が数多く存在します。実はこれが、AIにおける自然言語処理の大きな壁になっていたそうです。


それに対して、日本語の「五十音図」は、縦軸(子音)と横軸(母音)が完璧に整ったマトリクス(行列)構造をしています。音声学的な観点(口の形や声帯の振動など)から見ても、例えば「か」と「が」のような濁点の有無は、「無声音と有声音の違い」を

正確に視覚化した記号であり、完全に一対一で対応しています。


この高度な文字と音の設計を、今から1000年も前の平安時代に、日本の名もなき僧侶や学者、教師たちが、何世代にもわたって「耳と直感」だけを頼りに体系化してきたという事実に驚かされます。


この優れた日本語の体系があるからこそ、現代のスマホにおいて「フリック入力」のような直感的で高速な入力が可能になり、また、例外的なルールが少ないためにAIの機械学習にとっても非常に扱いやすい言語となっています。


最近では、このフリック入力さえも音声入力に取って代わられようとしています。しかし、音声入力の領域においても、日本語は「一音(一音節)を一つの文字に変換し、それをかな漢字変換する」というプロセスを踏むため、他の言語に比べて認識や入力のハードルが低いと考えられます。


さらに五十音図だけでなく、日本語には平仮名・カタカナ・漢字の使い分けという工夫も施されています。これにより、文章をパッと一目見ただけで意味を把握しやすくなり(視認性の高さ)、外来語もカタカナにするだけでスムーズに語彙に取り込むことができます。


「日本語は習得が難しい」とよく言われますが、こうして紐解いてみると、実はAIにとっても人間にとっても、極めて合理的で使いやすい優れた言語システムであると言えるのではないでしょうか。





2026年6月21日日曜日

ウクライナや中東の戦況を劇的に変えた「光ファイバー付きドローン」と日本の技術

 日本のメディアではあまり大々的に報道されていませんが、最近のウクライナ戦争や中東をめぐる紛争では、戦争のやり方が劇的に変化しています。


その中心にあるのが、「光ファイバー」で制御されるドローンです。



つい最近までのドローンは、飛行や映像の制御に「電波」を使うのが当たり前でした。しかし今、その常識が光ファイバーによって覆されようとしています。


従来の電波制御ドローンは、防御側が強力な妨害電波(ジャミング)を発生させれば、どこを飛んでいるかを探し出すまでもなく、簡単に制御不能にすることが可能でした。


この「電波妨害」への究極の対応策として戦場に投入されたのが、有線、つまり光ファイバーでつながったドローンなのです。


「10kmも20kmもの長い光ファイバーを引っ張ってドローンが飛ぶなんて不可能なのでは?」――そう思われる方も多いかもしれません。しかし、実際にはそのくらいの距離を平気でつながったまま飛行できます。


その秘密は、ドローンの機体側にある構造にあります。

機体の底部や後部に、極細の光ファイバー(芯線径わずか0.27mm〜0.4mm程度)を数キロ〜数十キロメートルにわたって精密に巻き付けた「スプール(リール)」を搭載。ドローンが前進する速度に合わせて、糸が自重でサラサラと空中に“置き去られていく”ため、引っ張る抵抗がほぼゼロで飛行できるのです。


光ファイバーを採用することで、電波式の弱点だった以下の課題が一挙に解決しました。

  1. 電波妨害を一切受けない

  2. 電波状況によるノイズやタイムラグ(遅延)がなく、超高画質な映像で操縦できる

  3. 電波を出さないため、ドローンや地上基地(操縦者)の場所を敵に逆探知されない


もちろん、光ファイバーにも以下のようなデメリットは存在します。

  • 物理的な破断リスクがあり、強風などの環境に影響される

  • ファイバー自体は軽量(1kmあたり数百グラム以下)でも、長距離用になるとスプール総重量が1kg〜2kgに達し、積載量を圧迫する

  • 一度空中に展開された光ファイバーは、回収・再利用が不可能(使い捨て)


しかし、これらのデメリットを補って余りあるほどの「確実性」というメリットがあるため、実戦での利用が急速に進んでいます。


ここで非常に興味深いのは、この技術の根底を支えているのが「日本」だという点です。

こうした軽量で強靭な光ファイバーをいち早く開発し、「家庭まで光回線を届けるFTTH(Fiber To The Home)網」を世界に先駆けて構築したのは日本でした。そして、それを可能にした「G.657規格(低曲げ損失シングルモード光ファイバー)」の開発・製造において、世界最高峰の技術を開拓し、牽引してきたのは日本の光ファイバーメーカーです。


「家の中でどれだけ直角にギチギチに曲げても通信が途切れないようにする」という、日本の住宅事情や民生用のニーズから生まれた素晴らしい技術が、巡り巡って現代の最先端兵器の心臓部に流用され、戦争の形態まで変化させている――。


技術の持つ二面性と、その皮肉な現実に強い驚きを禁じ得ません。


加速するAI時代の本質的な問題とこれからの向き合い方

  Anthropic(アンソロピック)のクロエ・ルビンスキー氏が国際会議「ARC 2026」で行った、非常に深い洞察に満ちたスピーチを動画で見ました。これを見て、私のAIに対する理解は、その凄まじい進歩に対して大きく遅れていたのだと痛感させられました。本当によく勉強し、考えなけ...