トランプ大統領の関税政策について、週刊ダイヤモンドで、「残念ながらトランプ関税で製造業は復活しません」という表題で記事(真壁昭夫:多摩大学特別招聘教授)が出ています。
その中で気になったのが、TSMCの創業者のモリス・チャン氏が語っている内容です。
「主に人件費で、米国工場で生産する半導体は台湾製より50%高い」(2022年)
随分以前から、日本の工業が中国や台湾に負けるのは、日本の人件費が高いからだという説がありました。
しかし、この説には間違いがあると思います。
というのは、人件費の製品の価格に影響する割合は、それほど大きくありません。
半導体の製造にかかる費用で、人件費はどのくらいの割合を占めているのか?どこに、人件費をかけていると考えられるのか?
半導体の製造は、ほとんどが自動化された製造機器で行われています。だから、人件費の割合は大きく見積もっても数%です。
今後は、AIで機能強化されたロボットが生産を担うと考えると、ますます人件費の割合は減って来ると考えられます。
人件費が50%高くても、その人件費の製品価格に対する割合が、2%としたら、結局1%の差が出るだけです。だから、人件費の差が大きいから、米国に工場を建てるのは無理というのはおかしな話だと思います。
TSMCが現在のように強大になったのは、人件費が安いからというのではありません。
むしろ、台湾政府などの手厚い保護に助けられたからだと思います。さらに、半導体製造に特化したために、米国や日本の複数のメーカーから、半導体製造を依頼されたというのも大きな理由です。これにより、半導体の製造量が増えて、その結果、製造価格が減少したと考えられます。
TSMCが熊本に向上を建設することになりました。これにも日本政府から多大の支援金をもらっています。多分、税制の面でも優遇措置を受けているはずです。
米国や日本は半導体製造について、過去に企業への支援をあまり行わなかったと思います。工場への土地などの税金を免除することもなく、普通に税金をかけています。中国や台湾は特に税制の面で、こういう企業を優遇してきました。優遇することで企業を育て、企業が大きく育ったことで、半導体製造で優位に立つことができました。従業員などが増え、その収入からの税金も増えました。
米国にしても、日本にしても、「こういう企業を育てたい」というのであれば、工場があることだけで、税金を取るような政策を取らず、むしろ支援金を出すようにして、育てていく必要があると思います。
最近は、日本政府も企業への支援を怠らず、すでにいくつかの会社には工場建設のための支援を行い始めていますが、今後も継続して行っていくようにしてもらいたいものです。
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