小泉進次郎新農水大臣が、備蓄米の放出をこれまでの入札ではなく随意契約という異例の方法で実施し、さらに5kgあたり2,000円という破格の価格を打ち出しました。この決定は、高騰するコメ価格への対策として注目を集めました。
しかし、この方法は根本的なコメ価格の引き下げには繋がりにくいと考えられます。その兆候は、アイリスオーヤマや楽天が備蓄米を販売した際、即座に完売したことからも見て取れます。
なぜ完売したのか? 一つには、多くの消費者が「今のうちに安いコメを確保しておこう」と考えたためでしょう。また、転売目的で買い占めを行った人もいた可能性も否定できません。これは、かつてトイレットペーパーがスーパーから姿を消したのと同じ現象です。市場に投入されるコメの量が少ないため、あっという間に品切れとなってしまうのです。
コメの価格は、基本的な経済原則である需要と供給のバランスで決まります。供給量全体が増えない限り、価格が下がることは期待できません。
コメ価格高騰の背景
現在、コメの価格が高騰している背景には、複数の要因が絡み合っています。
供給面の問題
2023年の猛暑による品質低下と収穫量減少: 記録的な猛暑がコメの品質を低下させ、結果的に収穫量が大幅に減少しました。
米農家の高齢化と後継者不足: 農業従事者の高齢化が進み、後継者不足が深刻化しているため、生産を維持することが難しくなっています。
生産コストの上昇: 肥料や燃料といった農業資材の価格が高騰し、農家の生産意欲を削ぎ、生産規模の縮小に繋がっています。
減反政策の影響: 長年にわたる減反政策により、コメの生産量が抑制されてきたことも、供給不足の一因となっています。
需要面の問題
物価高騰によるコメへの需要シフト: パンや麺類などの小麦製品の価格が高騰する中で、相対的にコメが割安感を持つようになり、需要が増加しました。
外食産業やインバウンド需要の増加: 外食産業の回復やインバウンド(訪日外国人観光客)の増加が、コメの需要を押し上げています。
備蓄意識の一時的な高まり: 一部の消費者の間でコメの備蓄意識が高まり、品薄感や買い占めに繋がった側面もあります。
これらの他に、長年続いている農協(JA)経由の流通構造も、市場価格に影響を与えている可能性があります。
根本的な解決策とは
これらの複雑な課題を解決するには、単に備蓄米を従来とは異なる経路で供給するだけでは不十分です。
今回の備蓄米放出は一時的な需給の緩和には繋がるかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。この機会に、日本のコメの供給体制について、抜本的に見直す必要があります。特に供給面の問題は喫緊の課題であり、このままでは農業を生業とする人が減少し、やがて日本でおコメを作ることができなくなる恐れがあります。
私たちは、日本の食料安全保障の根幹であるコメを守るために、今何をすべきなのでしょうか? 早急な対策が求められています。
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