日本の人口減少は、もはや避けられない現実となっています。少子化対策が講じられても増加傾向に転じないのは、「人間も動物の自然の本性として、個体数が増えすぎると繁殖努力を抑制する方向に働く」という説も、一つの考察として可能でしょう。
この根源的な問いは一旦脇に置くとして、テレビや新聞といった主要なメディアでは、「人口減少は国家の存続を揺るがす大変な問題である」という論調が目立ちます。しかし、この主張は本当にその通りなのでしょうか。
よく聞かれるのは、以下の点です。
人口減少が日本のGDPを押し下げ、世界における経済的地位を低下させている。
人口減少により働き手(労働人口)が減少し、社会全体が大問題に直面している。
このうち、労働人口の減少について考察します。
確かに、人口が減れば労働力人口は減少します。しかし、これは「全体の人口が減っている」という事実の裏返しです。つまり、サービスや生産物の主な受け手である総人口(=消費者の数)も同時に減っているため、社会全体で必要とされるサービス量や生産量もまた減少しているはずです。
人は自分のためだけでなく、他人のために働くことで生計を立てています。その「他人」が減っていくのですから、サービスを提供する「働き手」が減っても、社会全体が受ける影響は、言われるほど大きくはないのではないでしょうか。
問題とされる「働き手の減少率」と、「サービスを受ける側の総人口の減少率」の間には、著しい乖離はないと考えられます。しかし、人口減少を問題視する議論の中には、この**「需要の減少」**という側面を十分に取り上げずに、ひたすら「供給力(働き手)の減少」だけを強調する傾向が見受けられます。
また、先進諸国の状況にも目を向ける必要があります。アメリカやヨーロッパ諸国、さらには中国など、世界的に見て多くの国々で出生率の低下や人口の高齢化、あるいは将来的な人口減少が問題視されています。日本だけでなく、多くの先進国が同様の課題に直面しているにもかかわらず、なぜ日本ではこれほどまでに「大問題」として喧伝されるのでしょうか。単純に「人口が減っている」という事実だけが原因ではないのかもしれません。
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