2026年6月4日木曜日

AIに本の内容を図式化してもらった結果、AIの意外な「システムの壁」が分かりました

 友人から、米社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールド教授の著書『Stolen Pride: Loss, Shame, and the Rise of the Right(盗まれた誇り)』の内容紹介と、それに対する意見が綴られたメールを受け取りました。


そのメールには、教授の主張をわかりやすくまとめた以下のような図が含まれていました。



このように本の内容を図式化するのは面白い試みだと思い、この図が含まれたメールのテキストを提示して、AI(Gemini)に「同じように図式化してください」と依頼してみました。実際の本は手元になくても、ネット上にある書評や学術的な解説データを使って作成してくれるだろうと考えたのです。


AIからは『現在公開されている書評や要約、学術的な解説などの資料をもとに、彼女の主張の核心である「感情のメカニズム」を改めて図式化しました』という頼もしい返答がありました。しかし、残念ながら出力されたのは図(画像)ではなく、文字ベースの要約でした。提示したメールの図も「文字の組み合わせ」に近いものでしたので、これでもまずまずの回答ではあります。


これでは最新AIの実力を十分に味わえません。そこで「図(画像)で表現できませんか?」と改めて具体的にお願いしてみました。「図式化」という意味をよりビジュアルなものとして捉え直してもらうためです。


AIは、今度は見事なインフォグラフィック(画像)を2案提示してきました。ご丁寧に「案Aと案Bのどちらの案がお気に入りですか?」という質問を添えて。


私は画面を見比べ、「どちらも一長一短あるが、簡潔で分かりやすい案Bが良いと思う」と回答しました。


ところが、ここから奇妙なことが起こります。


それまで2案併記されていた回答がなぜか画面から消え、私が選んでいないはずの「案A」だけが選択された回答に上書きされてしまったのです。画面には案Aの画像だけが表示され、私が気に入ったはずの案Bはどこかに消え去ってしまいました。


(案Aの画像)


仕方がないので、「案Bの図が消えているので、もう一度表示して、ダウンロードできるようにしてください」と依頼してみました。


ところが、意外なことにAIからは以下のようなゼロ回答が返ってきたのです。


「大変申し訳ありません。システムの仕様上、一度選択されなかった別の回答案(選択肢Bなどのドラフト)や、過去に生成した特定の画像データをこのチャット画面上で直接復元したり、再度ダウンロード可能な形式でご提示したりすることができません。現在、私の手元(会話履歴)に残っているのは、先ほどご提示した詳細な画像のデータのみとなっております。」


さっきまで目の前に見せてくれていた画像が、「システムの仕様上」もうどこにも残っておらず、提示できないと言うのです。


AIの仕組みを詳しく知らないまま使っていると、一度画面に表示された画像やデータは当然どこかに保存されていて、普通に残っているものだと思い込んでしまいがちですが、これには驚きました。


サーバーの容量節約のため、選ばれなかったドラフト(一時案)はその場で即座に破棄するというシステム側の合理的な考え方なのでしょう。しかし、こちらが何気なく試行錯誤させて作った過去のやり取りは律儀に履歴として残っている一方で、直前に素晴らしいクオリティで提案してきた画像が瞬時に消滅してしまうというこのギャップは、なんとも不思議で意外な経験でした。




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