3月3日の毎日新聞一面に、「核燃サイクル、22兆円超 06年以降 事業費膨張続く」という記事が掲載されました。この記事では、以前から問題視されていた原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」のコストが、さらに増加している現状が報告されています。
核燃料サイクルの費用は、大きく分けて再処理工場の建設費、再処理に関わる費用、放射性廃棄物の処分費用、中間貯蔵費用などに分類されます。記事によると、これらの費用はそれぞれ増加しており、2024年の試算では総額22兆円を超えるとのことです。
特に問題となっているのが、青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場です。当初の計画から完成が大幅に遅れており、現在の目標は2026年度とされています。しかし、この目標も過去に27回も延期されており、完成の見通しは依然として不透明です。
費用増加の主な要因としては、福島第一原発事故後の新規制基準への適合に伴う追加工事が挙げられます。しかし、それ以前に実施された試験運転において、工場が高濃度の放射性物質に汚染されたことも大きな要因と考えられます。
核燃料サイクルは、技術的に非常に難易度が高く、実際に商業レベルで成功している国はフランスとロシアのみです。日本もフランスに再処理を委託する可能性を模索しましたが、具体的な契約条件、輸送方法、安全性などの課題が多く、実現には至っていません。
国際的には、使用済み核燃料の取り扱いに対する監視が強化されており、国内でも核燃料サイクル政策に対する国民の理解と合意形成が課題となっています。
原子力発電は、低コストの発電方法として評価されることもありますが、使用済み核燃料の処理費用を考慮すると、必ずしも割安とは言えません。核燃料サイクルの現状を注視し、エネルギー政策全体の中で原子力の位置づけを改めて検討する必要があるのではないでしょうか。
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