2021年5月7日金曜日

福島第一原発の処理水、海洋放出について

 福島第一原発の処理水を海洋に放出することを4月13日日本政府は決定した。


これに対して、韓国や中国がこの計画に反対している。また、地元の漁業関係者なども問題にしている。


これに関して、雑誌「Nature」に「Scientists OK plan to release one million tonnes of waste water from Fukushima」という表題の記事を出している。海洋放出は問題ないということだ。詳細はこの記事を読んでもらうといい。


この処理水の取り扱いに関しては、私はそれをタンクに貯めるというときから、そうするのは当然と思っていた。放射線を発生させるトリチウムが除去されないということなので、そんなものは海洋に流せないと思っていた。しかし、その時、そもそもトリチウムというのはどういうものかというのも、知らなかった。


                      (Getty)



トリチウム(三重水素)というのは、水素の仲間(同位体)で、普通の水素は、陽子1個と電子1個で構成されているのに対して、トリチウムは陽子1個、中性子2個、電子1個で構成されている。また、陽子1個、中性子1個、電子1個で構成されているのは、重水素を呼ばれている。四重水素というのは、陽子1個、中性子3個、電子1個で構成されるものなのだが、これはすぐに壊れてしまい、世の中には存在しないと言っていいようだ。


水素と重水素は安定しているのだが、トリチウムは安定しておらず、含まれている中性子が陽子に変化する時にβ線を放出する。中性子が陽子に変化して、ヘリウム3(陽子2個、中性子1個、電子1個)に変化する。このときの放射線は比較的強くない。半減期は12年程度である。


トリチウムは通常は酸素と結合した水として存在する。トリチウムを除去するには、普通の自らトリチウムで作られた水を分離しないといけないというわけだ。これを聞いただけで、トリチウムの分離はかなり難しいというのが分かる。福島第一原発の水に含まれている他の物質なら、水とその物質の性質が違うので、その性質の違いを使えば分離はできるのだろうが、同じ水なので難しいと思う。


トリチウムは自然界にも普通に存在しており、人体にも含まれている。人体は水の割合が高いので、当然だろう。


福島第一原発の処理水は、自然界に含まれている割合よりも更に一桁ほど少ない割合に薄めて、海洋に放出するということだ。だから問題ないというわけだ。


そういう意味では、このNature誌の記事のように、処理水を海洋に放出するのは問題なさそうだ。


韓国や中国が問題視しているようだが、実は原子炉はどの原子炉もトリチウムを作っており、それを冷却水ということで海洋に流しているという話である。福島第一原発の処理水ほど丁寧に有害物質を除去しているわけではなさそうだ。


ということは、地球全体で考えた場合、水で薄めようが、薄めないでおこうが、トリチウムが地球で増加していることには間違いない。だから、地球全体ではトリチウムは増えていっている可能性がある。地球全体から考えるとそれほど問題にする必要はないかも知れないが、さてどうなのか?トリチウムを発生させる原子炉がこれ以上増えないとすると、半減期が12年のトリチウムはある時期で、一定割合になり、増えないということになりそうだ。どのくらいの割合で一定量に達するのか、福島第一原発の処理水だけを問題視するのではなく、原子炉の処理水の問題として考えないといけないのかも知れない。


もう一つの疑問は、福島第一原発の処理水は、どうして海洋に流さなかったかという点だ。問題がないのなら、その時点で処理水をさっさとい放流しておけばよかった。しかし、その時点で放流しなかったのはなぜか?風評被害を恐れたというのはあるが、それだけで、放流をしなかったというのはちょっと納得がいかない。他に問題があったのではないかという疑問は残る。


まあ、世界各国の原発も福島第一原発の処理水よりも問題の水を海洋に放出していると考えると、福島第一原発だけを問題視するのはおかしいのだが。


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