2021年10月3日日曜日

病院が多すぎる日本が“医療崩壊”に陥った本当の理由

 テレ東経済ニュースアカデミーがYoutubeに流した「病院が多すぎる日本が“医療崩壊”に陥った本当の理由」というのが、興味ある話をしていたので、それを私なりにテキストに直してみた。実際のYoutubeの動画は以下のところにある。

https://www.youtube.com/watch?v=cXm4jujwOBM&t=12s


このブログを読まなくても、上のリンク先の動画を見れば済む話なのだが、テキストを事前に読んでおいたほうが理解が深まると考えたので、簡略化したテキストにしてみた。以下がその内容である。


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日本は世界最高レベルの医療大国で、かつ海外よりもコロナ感染者数が少ないのに、どうして医療崩壊が起こるのか、不思議に思っている人は多いはずである。


日本の病床数は世界一。病院の数も断トツ。それなのに、病床数が不足しているといわれている。


この理由は、病院が多すぎるからコロナに対応できる病床数が少ないということから発生する。(不思議な話だ)病院数が多いので、医師や看護師が多くの病院に分散してします。だから、それぞれの病院にいる医師や看護師などの人数が少ない。一つの病院あたりの医者数が少ないと、夜になるとお医者さんは休むので、どこの病院にもお医者さんがいない状態になってしまう。夜勤ができるお医者さんが少なくなってしまう。その結果、夜間、救急車に対応できる病院が少なくなる。


一人の医者がいる病院が10個あるよりも、5人の医師がいる病院が二つある方が、救急に対応しやすい。医者の数が多いと、それぞれが分担して夜勤などを考慮した勤務時間のシフトなど効率的に対応できる。


つまり、医者の少ない病院が10個あるよりも、医者の多い病院が1個か2個ある方が良いという事になる。


緊急事態の対応として、病院を統合して、病院数を少なくする方法の他に、各病院が連携して対応する方法もある。しかし、病院の連携が日本は取れていない。


病院が多いという事は、医療資源の無駄が多いという事にもなる。医療資源、つまり医療に必要な機器を、それぞれの病院で用意しないといけない。そのため高額な医療機器をどの病院でも買うことになる。これだけ多額だと、病院の負担は大きい。海外に比較して、日本の病院は高額な機器を持っているところが多い。



病院に高額な医療機器がたくさんあるという事は、結局それが全体として国民の経済的負担になる。高額な医療機器を用意する費用がかかるということで、個々の病院はその支払のために儲けないといけない。そのために、無駄な診療や入院を行う温床になっている可能性がある。実際に日本は外来受診回数が海外に比べて非常に多い。入院日数も長い。つまり、余計な受診や入院日数を使っていることになるのではないか。


ベットが病人を作っているという事を疑われるデータもある。



上のグラフは、ベット数が多い県のほうが一人当りの入院医療費も多いということを示している。高知県と静岡県を比べてみると、ベット数の多い高知県は静岡県の倍の医療費を使っている。


また、それぞれの医者数の少ない病院では複数の治療を行えない。このために複数の病院を治療のために回らないといけない。

例えば、高齢者が転倒して、頭を打ち、骨折した。さらに、内臓疾患がある人だったという場合を想定する。この場合、この高齢者は、A病院で脳外科の対応をしてもらい、B病院で骨折対応(整形外科)をしてもらい、C病院で内臓疾患(消化器内科)の対応をしてもらう。一つの病院の対応力が弱いので、一つの病院ですべての症状が対応できないからだ。この場合、患者を運ぶのは忙しい救急隊員である。


病院が多いと、一つの病院で行う手術の数も少なくなる。医者が行う手術の数も減る。手術の経験が少ないので、医者は十分な手術の経験が積めず、手術の技能が向上しない。


それでは、どうすればいいか。病院の統合・再編を行って、医療資源の適切な配分を行えば良い。これは、医療業界ではわかりきっていることで、長年言われていることである。


これが進まないのはなぜか?こういう対応を嫌がるお医者さんが多いからだ。2つの病院が合併するとすると、2人いた院長先生が1人減る。1人は院長をやめないといけないので、やりたがらない。院長先生だけでなく、医療関係者は反対する。病院で働く看護師なども働く場所が変わってしまうのを嫌う傾向がある。また、近隣の住民も近くにあった病院がなくなることに反対する。


病院の統廃合だけでなく、病院間の連携を進めていくという対策もある。


病院間の連携を進めるためには、病院間で情報の共有をしてもらう必要がある。民間病院は患者を奪い合う状況にもあるので、なかなか病院の情報を流せる状況にない。日本の病院は情報開示には消極的である。その理由は、病院の情報開示はいたずらな混乱を招くということだ。こういう問題もあるが、病院の情報開示をどういう具合に進めていくか、考えないといけない。


このまま何も対策をしないなら、医療制度の欠陥が今後もずっと犠牲者を生むという事になる。今回のコロナウイルスが収まったとしても、また、数年後同じような状況が発生する可能性は高い。


医療というのは、国民の支払う保険料や税金が使われているので、公的な存在のはず。

単純に、この問題が、病院の統合・再編・連携でかたずくものではないのはわかっている。だから、きちんとした議論を行って対策を考えていかないといけない。


国もこの病院の統廃合は必要と考えて、厚労省は2019年9月に「再編統合について特に議論が必要」ということで、全国424病院の実名リストを公表している。これを発表したときには大騒ぎになったが、それでも厚労省としてはやらないといけないと考えているようだ。


我々は、病院が多ければ多いほどいいんだ、病院は近くにあればいいんだという安直な考え方は、やめた方が良い。データを見て、そのデータに基づいて、どういった病院(医療資源)の配分が良いんだろうかという事で考えないといけない。

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以上です。


コロナウイルスで医療システムの問題がクローズアップされた。この時期だから、今後のためにも、今後の医療システムについてしっかり考えて、次の医療危機に対応できる医療システムを作り上げる必要があるようだ。




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