2018年8月13日月曜日

大阪富田林署からの被疑者逃走について

弁護士と接見していた被疑者が接見室から逃走した。

これはセキュリティという観点で言って、まったくどうしようもない話だ。

問題点はいくつかある。
(1)接見を終了した弁護士は、接見が終了したことを留置担当の警察官に連絡していない。
(2)留置担当の警察官が、接見室隣の前室に居なかった。
(3)弁護人側のドアが開閉すると、ブザーが鳴り、警察官がそれを察知できるシステムがあるが、電池が抜かれており、ブザーがならない。
(4)接見室の間仕切りとなっている透明のアクリル板3枚の真ん中の右側が金属の枠からはずれ、10センチほどの隙間ができ、通り抜けられるようになっていた。
(5)接見が長いと不審に思ったのが、1時間半ほどあとだった。
(6)署内には20名ほどの警察官が居たのだが、被疑者が逃走したのに誰も気づかなかった。

(1)は「連絡する」、(2)は「前室にいる」、(3)は電池を入れておく、という対応で済む話だ。ただ、こういう単純なこと(動作)が、見過ごされていることが問題と言えるだろう。

(4)は少し問題が複雑だ。ふつうは、わざわざアクリル板にしているということは、ちょっとしたことでは金属の枠から外れるような仕組みにはなっていないはずである。受刑者の座っていた椅子でたたいても壊れない構造のはずだ。いままで、そういうことが発生していないことを考えると、原因を究明する必要がある。アクリル板がはすれた原因を見つけて、対策しないといけない。
さらに、弁護士が入っている部屋に鍵をつけて、カードキーなどを弁護士に持って入ってもらうというのも、考えておく必要があるようだ。いくつかの署ではそういう鍵をつけているようだ。それなら、アクリル板がおかしくなっても、大丈夫だ。

(5)は接見時間が事前に予想されることから、目覚まし時計などで、確認する時刻を設定しておくなどの対策があると思う。留置管理担当業務の警察官が必ず設定して、確認するようにするなどの対策が必要だろう。

(6)については、さてどうするか。被疑者は署内にあった脚立を使って塀を乗り越えて逃走したらしい。警察署の周りの塀を監視する監視カメラなどを使って、塀を乗り越えるような場合には警報を鳴らすようなシステムの導入が考えられる。ただし、これは結構お金がかかりそうだが。

警察署の中で、被疑者の接見の場合の、ルーチンワークとしての取り決めと、その内容の署内での徹底ができていなかったと考えられる。例えば、「接見の場合、前室には必ず警察官がいること」といったことの徹底である。こういう標準の動作、手順が明確になっていて、それが徹底されていないのだろう。製造工場などでは、製品を作る際の手順などは、ルール化して作業員に徹底されている。そして、機会あるごとに、その手順で良いかという問いかけをして、手順の改善を図っている。

こういう事例でも、ルーチンワークの品質の問題として取り上げることが可能だ。被疑者接見時のルーチンの品質の向上ということで。逃走対策だけでなく、接見に伴う作業の効率化なども品質として考えたらいい。1年に1回でもいいから、接見に関しての品質向上をテーマとして、議論するなどを行うといいのではないかと思う。警察官の意識の向上がはかれるはずだ。

それにしても、逃げ出してしまった被疑者も可哀想だ。逃走したことで追加の刑が発生する。さらに、こんなにテレビで放送されたので、全国に彼の面が割れてしまった。逃走していなければ、彼の顔などほとんどの人が知らなかったはずなのに。まあ、被疑者や受刑者は、逃げ出したくなる気持ちは何となく分かるが、なんの特にもならないことを認識しないといけない。

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